第70章

担任は一瞬言葉を切り、雪乃へ視線を向けた。

目の下にうっすら青い隈。寝不足――たぶん、雪乃の母が勉強にうるさくて、予習が遅くまで続いたのだろう。

わざわざ遮るのも忍びなく、担任はやわらかく言った。

「じゃあ、雪乃。暗唱してみて。みんなも教科書を見て、合ってるか確認してね」

雪乃は両手を背中に回し、胸を張って大きな声で詩を読み上げる。

「『春が来た』。春が来た 春が来た どこに来た……」

一語も落とさない。発音ははっきり、声にも豊かな変化があり、まるで舞台の上で詩を披露しているかのようだった。

教室が「おお……」とどよめき、「すごい!」があちこちから上がる。

担任も頷いて褒めた...

ログインして続きを読む